制作ノート/ 広告の中の2台

1873年の新聞広告に、heavy work 用のミシンとして Singer No.2 と Grover & Baker No.1 の2台が記載されている。

いま、その2台が自分のスタジオにある。

こういうことは、説明するのが意外と難しい。

古いミシンを持っている、という話ではなく、資料の中に出てくる機械が、150年以上の時間を超えて、実際に目の前にある、ということだからだ。

しかも、自分にとって大事なのは、ただ所有していることではない。

その2台が、現在の制作や思考につながっていることの方だと思っている。

ジーンズの初期構造を調べていると、どうしても資料は文字や写真として残る。

けれど、道具そのものが残っていて、しかも動くとなると、話は少し変わる。

構造の理解が、急に手触りを持ち始める。

Singer No.2 と Grover & Baker No.1 は、自分の中では単なる骨董ではない。

ジーンズがまだ工場の分業として固まり切る前、限られた機械の中で heavy work を縫っていた環境を、具体的に考えるための道具でもある。

資料を読むことと、実際にその機械の前に立つことの間には、やはり大きな差がある。

広告の中にある名前が、いまスタジオの中で黒い鉄として存在している。

その事実の重さを、最近あらためて感じている。

takayuki echigoya