染色制作ノート

Scars of Making

私は布を完成させるのではなく、

布の中に出来事が起こる条件を作ることから制作を始めます。

チェーンステッチで縫う。

針を刺す。

糊で動きを止める。

締める。

染める。

そして外す。

これらの行為は装飾ではなく、

布に時間や力の痕跡を通過させるための操作です。

縫われた張力は、

糸を外した後も形として残ります。

染料は一様には入らず、

工程の差や乾燥の差が

色の層となって現れてきます。

ときに強い傷を残そうとしても、

時間の中でそれが和らぎ、

静かな表情へと変わることもあります。

私はその変化を失敗とは考えません。

布がどのように反応し、

どのように回復していくのかを観察すること自体が、

制作の一部だからです。

完成された美しさよりも、

通過した出来事の記録、

そしてそこに残る生きた感じを重視しています。

何度も縫い、染め、外し、重ねることで、

布は変化し、

時間を内側に蓄えていきます。

それは

布が美しく、時間と痕跡を持ったまま存在するために、

人が手を貸す行為とも言えると思います。

この衣服には

作為だけでなく、

時間と素材が関与した結果が残されています。

それは

「作った痕跡」であると同時に、

「変化が起きた証拠」でもあります。

takayuki echigoya